経理の仕事は「正確さ」と「スピード」の両立が求められます。
専門性も必要で、決算のたびに業務負荷が一気に高まる職種ということもあり、
ついつい「自分でやったほうが早い」「任せると間違えられるから不安」と感じ、後輩や部下に仕事を任せられない経理パーソンは少なくありません。
身に覚えのある方は、毎日忙しく余裕のない日々を過ごしてる方が多いと思います。
私自身、人に任せることができず、なんでも自分でやってしまうタイプでした。
ですが、思い切って人に任せるようになってから、自分も相手も会社も、うまく回るようになりました。
任せられない状態が続くと、実は本人・組織・後輩の全員にとってマイナスの影響が広がっていきます。
この記事では、後輩や部下に仕事を任せる重要性と、任せられない場合に生じる問題点、そして効果的な任せ方について整理します。
- 後輩ができた経理パーソン
- さまざまな理由で仕事をスタッフに任せられない経理マネージャー
本記事の信頼性

本人への影響

業務がいつまでも属人化する
自分しかできない仕事が増えるほど、残業や休日対応に追われやすくなります。 体調が悪くなっても休みがとりづらく、良いことはありません。
スキルの伸び悩み
「仕組みづくり」「マネジメント」といった上位スキルに挑戦できず、いつまでも担当者レベルにとどまりやすくなります。
プレイヤーとしても、業務ローテーションの機会が減るため、スキルの幅が広がりません。
私自身がそうでしたが、人に教えてみると、自分が理解していなかったことに気づけたり、人を育成する観点からコミュニケーションを取り始めたりします。
プレイヤーとしても、マネージャーとしても、スキルアップしたければ、勇気をもって後輩や部下に業務を任せましょう。
評価・昇進の遅れ
組織は「人を育てられる人材」を求めます。
任せられない姿勢は管理職候補として不利になることもあります。
「自分でやった方が正確だし早い」という理由で任せられないと、マネージャーの机の上には未処理の書類やメールが積み上がっていきます。
結果として “本来やるべき管理業務” に手が回らなくなります。
たとえば以下のような仕事は、マネージャーにしかできない領域です。
- 部署全体の業務設計(効率化やシステム化の推進)
- 他部門や経営層との調整
- 若手育成の仕組みづくり
これらが後回しになれば、経理部門全体のパフォーマンスが落ち、長期的にはマネージャー自身の評価にも響きかねません。
「仕事を任せる」ことの本当の意味
仕事を任せることは、単に「自分の仕事を減らす」ためではありません。
むしろ 組織を強くし、自分の役割を次のステージに進める ための戦略です。
経理業務は属人化しやすい領域だからこそ、早いうちから部下に任せて経験を積ませることが重要です。
そうすることで、以下の好循環が生まれます。
- 部下が実務を通じてスキルアップする
- マネージャーは管理・改善に時間を割ける
- 部全体の処理能力が底上げされる
組織への影響

業務の停滞リスク
一人に仕事が集中すると、その人が休んだ途端に業務がストップします。
何かしらの理由でキーパーソンが急に休むことは、普通にありえますし実際に見てきました。
最低1人は替えがいる。そんな体制づくりが必要です。
効率低下
仕事を分担できないため、チーム全体の処理スピードが上がりません。
いそぎの状況であれば部分的にでも、切り分けて渡せる領域がないか。
重い仕事を任せるときは、一気に任せず、段階的に進めることも大切です。
属人化によるリスク増大
担当が長いこと変わっていない業務は、ブラックボックス化しがちです。
担当者しかわからない複雑な数式のファイルが存在したり、経緯のわからない処理が存在しがちです。
経理の業務は、会計理論や過去処理の経緯など「背景理解」がものを言う場面が多くあります。
マニュアル作成の際は、「作業手順」と「処理の経緯」の両面を盛り込んだ内容にし、業務を標準化することでリスクを低減できます。
後輩への影響

成長機会の喪失
「教えてもらえない」「やらせてもらえない」ことで、後輩がスキルアップできません。
経理業務は基礎的な仕訳入力作業もあれば、「税効果会計」など高度な判断を伴う業務まで幅があります。
マネージャーが全てを抱え込んでしまうと、部下はいつまでも簡単な入力業務しか経験できません。
結果として “決算を自走できる人材”が育たない のです。
これは組織にとっても大きな損失であり、仮にマネージャーが異動や退職をすることになれば、現場は一気に混乱してしまいます。
モチベーション低下
単純作業ばかりで責任ある業務に携われないと、やる気を失い離職につながることもあります。
かく言う私も、希望の業務に携わらせてもらえず転職した過去があります。
(いまでは転職のきっかけとなったことに逆に感謝しているくらいですが)
とはいえ、経理の難しい業務は、若手に任せにくいのも事実。
たとえば税務など、最初は補助的な立場で、ベテランスタッフとともに複数名体制とし、中長期的に若手のスキルアップができるとよいでしょう。
仕事を任せるためのステップ

「任せるのは不安」という方も多いですが、たしかに丸投げではうまくいきません。
以下のステップで徐々に進めると安心です。
小さなタスクから任せる
支払伝票の確認、仕訳入力など簡単な業務からスタート。
高度な業務は部分的に切り分けて渡す。
難易度は段階的に上げましょう。
手順書を整備する
誰に任せても同じ品質になるようにマニュアル化。
あなたが任せたその人も、いずれ別の誰かに任せるときがきます。
マニュアルがあれば引継ぎのハードルも下がります。
ダブルチェック体制を作る
最初は自分で確認しながら徐々にチェック頻度を減らす。
私の経験上、任せる相手のレベルによっては、チェック(と指摘)のための負担が重くなります。
よくあるパターンが作業的に入力したが、自分でチェックしていない。というもの。
作業完了報告を受けた後は、自分でチェックしたかどうかの確認や今までと変わった点はなかったか。などの質問を投げかけると精度が向上してくるでしょう。
慣れてきたら自走に任せる。
振り返りを行う
後輩の成長をフィードバックすることで任せやすくなる。
失敗しても一度は経験させ、再発防止策を一緒に考える。
まとめ

経理の仕事を後輩に任せられないと、「本人は忙殺され、組織は非効率になり、後輩は育たない」という三重苦に陥ってしまいます。
経理パーソンに求められるのは「自分で抱え込む力」ではなく、「チームで回せる仕組みを作る力」です。
少しずつ任せることで、自分の負担を減らし、キャリアアップにもつながります。
ぜひ明日から、後輩や部下に一つでも新しい仕事を任せてみてください。
コメント