- 税理士試験を諦めるか迷っている
- 諦めたあとのキャリアに不安を抱いている
- 会計事務所で働いている
私は税理士試験を撤退した元会計事務所職員です。
税理士を目指して、会計事務所で働きながら税理士試験を受けていました。
現在は上場企業に転職し、企業経理で10年以上のキャリアを積んでいます。
税理士試験を諦めるのは悔しいですが、私は撤退することで人生が好転しました。
税理士試験で得た知識は、のちのキャリア形成で武器になります。
結論、「企業経理へのキャリアチェンジ」がオススメです。
実際に私が働いている大手上場企業でも優秀な経理部員は、
「税理士試験の撤退者」や「会計事務所の元職員」である人が多いです。
私の経験をもとに解説しますので、ぜひ参考にしてください。
税理士試験を諦めて得られるもの
税理士試験が計画通りに進んでいない人は、
税理士試験から撤退することで得られるものがあります。
時間の余裕
税理士試験に合格したければ、すべての時間を注ぎ込む覚悟が必要です。
逆にいえば撤退する場合、税理士試験の縛りから解放されることになります。
- 大切な人との時間
- やりたかった税理士試験以外の勉強
- 人生を充実させる趣味
犠牲にしてきたものも多いはず。
私も税理士試験の受験をしていた頃は、試験勉強が中心の生活でした。
旅行に行ったり、仕事の勉強など。
税理士試験のために、いろんなことを諦めた20代でした。
税理士試験を撤退すれば、人生にゆとりを取り戻すことができます。
視野の広さ
税理士試験に集中している時期は、まわりが見えにくいものです。
私は、税理士試験にチャレンジしている間に、30歳前後に差し掛かり
「結婚」「出産」と、ライフステージが変化しました。
- 家族ができて守るものができた
- いまの仕事を続けて将来大丈夫だろうか
将来の不安も生まれるわけですが、
30歳前後であれば、活躍できるキャリア形成がしやすいです。
私は企業経理への転職を選択し、仕事もプライベートも充実するようになりました。
視野を広くすることは人生に大きく影響します。
より良い給与/待遇
すべての会計事務所があてはまるわけではありませんが、
「税理士補助」として働き続ける場合、以下の傾向があり人生ハードモードです。
給料が上がりにくい
税理士補助の給料は高くありません。
若いうちはよいかもしれませんが、
結婚、出産などライフステージの変化に応じて給料は重要になってきます。
私は幸い会計事務所にしてはホワイトな環境でしたが。。。
20代後半で年収450万。
それでも、会計事務所に残り続けた場合の昇給は期待できなかったと思います。
閉鎖的な職場環境
会計事務所は閉鎖的な職場環境になりがちです。
外部との関わりが少なく、業界的に零細事務所が多いため
- 特定の人が職場を支配している
- 毎日同じ人と顔を合わせる
- 新しいアイデアや意見が生まれにくい
こんな環境になりやすい
逃げ場もなく、閉塞感を感じながら働き続けることは容易ではありません。
税理士補助の仕事は飽きる
私の経験上、税理士補助の仕事は面白いです。
クライアントを巡回監査し、決算と税務のスキルが身に付きます。
ただし、3年程度でルーチンとなり。5年もたてば飽きます。
市場価値を考えたとき、年齢に応じたスキルがあることが望ましいです。
スキルアップが鈍化しやすい会計事務所でこれ以上年齢を重ねるべきではない。
そういった判断はあると思います。
税理士試験の引き際の目安
税理士試験が計画より長期化していないか客観視することも重要です。
- 3年で1科目も合格できていない
- 5年で2科目しか合格できていない
など、
経過年数と合格状況で、引き際を見極めるのも大切です。
私は撤退の判断が遅く、9年の受験で下記の結果でした。
働きながらの受験だったので1年に1科目受験をしていました。
- 財務諸表論 合格
- 簿記論 合格
- 消費税法 不合格
※ すべて3回ずつ受験
冷静に早めの判断が正解です。
税理士試験を諦める場合のキャリア戦略
税理士試験を撤退したからこそ戦えるフィールドがあります。
企業経理への道が狙い目
税理士試験を撤退した場合は、企業経理としてキャリアを積むのがオススメです。
理由は以下のとおりです。
税理士試験の知識は活きる
税理士試験で学んだ知識は企業経理で活かせます。
1.簿記論
- 仕訳がわかる
- 財務務諸表作成までの工程を知っている
- どのような会計論点が存在するか基本的な理解がある
勉強してきた人にとっては当たり前だと感じることかもしれません。
ですが、意外と簿記論のような高いレベルで簿記を学んだ人は多くありません。
実際に上場企業2社で経理で働いて感じたことです。
簿記論の勉強経験は企業経理においてアドバンテージになります。
2.財務諸表論
- 会計基準を読むことに抵抗がない
- 根拠を持って財務諸表作成ができる
- 会計理論を背景に深い経営分析や財務状況の説明ができる
税理士試験の科目の中で一番実務で役に立つと実感しています。
特に上場企業で経理をしたい場合は、財務諸表論の知識は強い武器です。
会計理論を体系的に学んだ経験があると、
- 自社の処理方法も客観的な視点で見ることができる
- 決算報告の場で会計的視点を織り交ぜ説得力が出せる
- 経理部内でも一段上のレベルで会話ができる
こういった人は年収も上がっていきやすいです。
財務諸表論の知識があれば企業経理の仕事も楽しくなります。
3.税法
- 企業経理として一段高いポジションの仕事ができる
- 税理士と税務相談の会話が成立する
- 税制改正対応で重宝される
税務といえば会計事務所では誰でもやる業務です。
ですが企業経理においては、一段高いポジションの業務と位置づけられます。
新人に任せられるということは少なく、経理という専門職の中でもさらに専門的な分野です。
税法の勉強経験があれば、経理部の中でも独自のポジションを築くことに繋がります。
税務担当者の不足を課題としている企業は多いです。
私自身、転職活動や自社でも税務担当者の人材不足を見てきました。
税務はいきなり主担当ではなくても、
キャッチアップできる基礎知識があれば強みになります。
会計事務所の経験は活きる
会計事務所で得た経験は企業経理で活かせます。
1.会計と税務をひとりで完結させた経験
会計事務所で働くと「会計」と「税務」を経験します。これは強みです。
決算を締めて税務申告書までまとめることは、企業経理ではなかなか経験できません。
業務量と人員の多さから、業務が細分化されているからです。
細分化されているとはいえ
本来的には経理の仕事は一体として見れることが望ましいです。
- 同僚の仕事も含めて横断的な視点で見れる
- 全体を意識し、自分の業務をこなせる
これができると業務の質に深みやキレがでます。
小規模でも構わないので広い業務をひとりで完結させた経験は、
視野の広さから経理業務の質の高さや部内メンバー間の相互理解に繋がるため強みといえます。
2.複数の会社の決算経験
会計事務所ではひとりで複数のクライアントを担当します。
クライアントは業種や経営状況の良し悪しなど、さまざまです。
クライアントの数だけ、異なる種類の取引があり、異なる決算を経験します。
物販業、建設業、広告業、卸売業、不動産業、サービス業、製造業・・・
幅広い業種業態の決算経験は、企業経理でも処理判断を助けます。
私は企業経理で連結決算を担当しはじめてから、様々な業種の子会社を見ることになりました。
会計事務所時代に近い感覚があり、いまになって過去の経験が活きていると感じています。
3.クライアントとのコミュニケーション経験
会計事務所ではクライアント先へ訪問するため、コミュニケーション能力が培われます。
- 相手の知識レベルに応じた柔軟な説明
- 忙しい社長を相手にした簡潔でロジカルな話し方
これらの経験は企業経理でも活かされます。
企業経理は黙々と事務作業をしているイメージもありますが、実際はそうではありません。
外出こそ少ないですが、
会計事務所職員と同じように様々な立場の人と折衝する機会が多くあります。
特に他部署との利害調整が発生しがちです。
相手の立場に寄り添い地道に信頼関係を築いた経験は、企業経理でも必要とされる重要な能力です。
企業経理の魅力
会計事務所より企業経理は魅力的です。
1.待遇面が良い
会計事務所の税理士補助と比べると企業経理は待遇が良い傾向にあります。
給料や福利厚生の面では企業経理に行くと上がりやすいですし、上げていくことが可能です。
企業経理の年収は「スキル」ではなく「業界」で決まります。
年収の高い「業界」の企業経理に入れば、会計事務所職員でいるより人生設計はしやすいです。
2.部署異動もできる
ひとつの組織に長く勤めたい。
という希望がある場合、企業経理が適しています。
同じ仕事を長く続けると
- 仕事に飽きる
- 嫌な上司や同僚がいる
という状況を変えやすいです。
仕事に飽きた場合は、他部署に異動することもできますし、
人の異動により嫌な人間関係が解消されることがあります。
(問題のある社員は会社都合での異動になりやすい)
いつまでもこの状況は続かない。
そう思えるだけでも精神衛生上よかったりします。
企業経理は長く働きたい人に合った選択です。
3.仕事の幅が広い
企業経理は業務が多岐にわたり、仕事の幅が広いです。
- 有価証券報告書や決算短信などの開示業務
- 連結決算や税効果会計など大企業ならではの会計処理
- IFRS導入や会計システム入替などのプロジェクト推進
- 社内報告やプレゼンの機会
- 内部統制・監査対応・IR資料作成・予算策定など
すべてを知ることは難しいかもしれませんが、自分の得意分野を伸ばすことで自分に合ったキャリア形成が可能です。
計画的に企業経理でステップアップをしていけば、会計事務所職員のときより年収も上げやすいでしょう。
仕事の幅が広いことは企業経理の魅力です。
企業経理に進む場合の注意点
企業経理に進む場合の注意点は3点です。
上場と非上場でキャリアに差が出る
企業経理で市場価値を高めたい場合、「上場企業」にもぐりこむ必要があります。
有価証券報告書や決算短信など上場企業でしか携われない業務は転職市場で評価されます。
私は、会計事務所から中規模の上場企業の経理に転職しました。
その後、力を付けて大手上場企業の経理へステップアップしました。
市場価値を高めていきたい場合は、上場企業の内定をつかんでください。
あせらずじっくり転職活動することが重要です。
チームワークで仕事をする
企業経理はチーム単位で仕事をします。
特に決算中は、ひとりの作業の遅れが全体に波及するため、互いにフォローしあって業務を遂行します。
チームワークが苦手な方は会計事務所の方が相性がよいかもしれません。
ですが、企業経理はチームで働くことが醍醐味でもあります。
- 上司からはスキルを学び
- 同僚と切磋琢磨し
- 後輩を育てチームの成長を感じる
決算のときは忙しく大変ですが、チームの一体感を感じる瞬間でもあります。
チームワークが楽しいと感じるのは私だけではないはずです。
業界によって年収が変わる
企業経理へ転職する際は、できるだけ年収もアップさせたいものです。
年収アップしたい場合、自身のスキルも大事ですが、
それ以上に「給与水準の高い業界」の会社を選ぶ必要があります。
私はこの点の理解がなかったため、会計事務所から転職した1社目の企業では給料が低くて苦労しました。
財務状況が良い会社も、給料が高いとは限らないため注意です。
私は過去の失敗から、2社目の企業に転職するときは、
業界を選び、転職エージェントをとおして企業との給与交渉もしてもらいました。
結果、大幅に年収アップを果たせました。
企業経理への転職で年収を上げたい場合は、
業界選びと給与交渉をしてくれる転職エージェントの活用が成功へのカギとなります。
転職エージェントの活用
私が企業経理に転職したときは、転職エージェント7社に登録しました。
2回転職しましたが、2回とも7社の転職エージェントを活用しました。
実際に私が内定を受けたのは「JACリクルートメント」と「MS-JAPAN」経由です。
実際に転職エージェントを使用してみて、印象的だったのが、、、
転職エージェントに7社も登録していると、別々のエージェントから同じ会社を紹介されます。
どこも同じ案件をもっているんだなぁ。と思っていたら
たまに特定のエージェントからしか紹介されない「魅力的な企業」が出てきます。
私はその企業と縁があり、良い転職ができました。
まとめ
本記事では「税理士試験を諦めて得られるものとキャリア戦略」について解説しました。
企業経理への転職は、税理士試験の経験を活かしやすく、人生の選択肢も広がります。
私は、税理士試験を諦めると何も残らないと思っていましたが、
撤退して10年以上が経ち、勉強した経験が今に活きていると強く実感しています。
行き詰るのは、税理士試験を辞めた人ではなく、勉強をする努力を辞めた人です。
税理士試験の努力はのちのキャリア形成で還元されます。
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